飛ぶことを負い続けた女性の一生涯
ある女性パイロットが主人公。
彼女の、ほぼ誕生から死去までを描いているため、かなりの長編大作である。
約800ページ。
Kindleで購入したのでそのボリューム感を知らずに読み始めたところ、読書の進み具合を表す%がなかなか進まずにびっくり。
あまりの長さに途中は距離を置きながら読んだものの、数か月かけてやっと読了した。
特に後半からは一気に物語が進み、読むスピードも加速した。
酸いも甘いもある、それでこそ人生
パイロットの冒険小説ということで、メカ好きの主人公目線での飛行機に関する詳しい描写や、色々な土地の上空を旅する壮大さなど、この小説の特徴はたくさんある。
でも特に私の心に残ったのは、主人公のマリアン含め、周りを取り巻く人物の生涯の、良い面とそうでない面が両方しっかりと描かれている感じがしたということ。
パイロットになりたいという確固たる意志を持ちながら、決して裕福ではないマリアンが、どうやって飛行機の操縦を習い夢を実現できたのか。
それはおそらく美談では片づけられない、痛みや傷、もしかしたら恥ずかしさを伴うもの。
マリアン含めてほぼ全ての人物は、綺麗な道だけを歩んできたとはいえない。
そこも生々しく描かれているのがリアルだなと感じて、少し心を痛めながら読んだ。
もう一人の主人公、ハリウッド女優との交差が面白い
今(マリアンが居ない時代)と昔(マリアンが生きていた時代)を行き来する構成であることは、この小説の特徴の一つといえる。
現代のストーリーの主人公は、お騒がせハリウッド女優のハドリー。
しばらくは、ハドリーの話の存在意義があまりよく分からなかった。
でも最後まで読んで、ハドリーだけが見つけた真実があったことに、そしてその真実はおそらくハドリーしか見つけられなかったということに、マリアンとハドリーという2人の女性が異なる時代でお互いの人生に触れたことに、この小説の面白さを感じた。
少なくとも私は予想できるような分かりやすい結末ではなく、最後までどきどきしながら読んだ。
コメント